突然の退職。突然に残された引き継ぎの不備。これらの問題は、組織全体の効率性と生産性を脅かすことになります。
2023年、デジタル化とリモートワークの進化が進む中で、これらの問題を解決する新たな対策が必要になってきました。
この記事では、退職者の引き継ぎミスを防ぐための、6つの現実的で効果的な対策をご紹介します。これらの対策を活用し、組織の成長とスタッフの満足度を高める一助としてください。
現職者の退職などの際に、引き継ぎ資料が不十分である。
引継ぎ資料の作り方をお教えします。
1.業務マニュアルの整備
業務マニュアルを整備することで、業務内容や手順を明確化し、引き継ぎ資料としての役割を果たします。
また、業務マニュアルは常に最新の状態に保つことが必要です。業務マニュアルを作成する場合は、以下のような項目を考慮する必要があります。
- 目次: マニュアル全体の構成を示し、どのような内容が含まれているのかを一覧で示します。
- はじめに: マニュアルの目的、使用方法、および対象読者について説明します。
- 業務の概要: 業務の背景や目的、業務内容、業務フローなどを示します。
- 業務の詳細: 具体的な業務プロセスや手順、作業方法、使用するツールやシステム、および業務に関するルールや規定などを詳しく説明します。
- トラブルシューティング: 業務において発生しうる問題やエラーの原因、解決方法、および対処法を説明します。
- 用語集: 業務に関する用語や略語をまとめ、解説します。
- おわりに: マニュアル全体のまとめや、改訂履歴、および連絡先情報などを記載します。
2.ナレッジマネジメントの導入
ナレッジマネジメントとは？
組織内の知識を効果的に収集、保存、共有、活用するための一連のプロセスや手法を指します。
主な目的は、組織の競争力を向上させるために、持っている知識資源を最大限に利用することです。
具体的には、従業員の持つ専門知識や経験、企業の業績データ、過去のプロジェクトの結果や学びなど、組織内のさまざまな形で存在する知識を効果的に管理します。これには、知識の識別、収集、整理、分析、保管、配布、そしてその知識を利用して組織全体が学び、成長するための手法が含まれます。
ナレッジマネジメントを導入することで、社員が保有する知識やノウハウを共有化し、引き継ぎ資料としての役割を果たします。社内SNSやドキュメント管理システムなどを活用することが重要です。
具体的な手順
- ナレッジマネジメントの必要性を共有する
ナレッジマネジメントを導入する前に、組織内での共通認識を形成することが大切です。ナレッジマネジメントの導入によって、組織全体で情報共有が円滑になり、生産性の向上やミスの軽減などの効果が期待できることを、社員に説明し共有しましょう。
- ナレッジマネジメントの目的とゴールを設定する
ナレッジマネジメントの導入にあたって、何をどの程度の期間で達成するかを明確にする必要があります。目的とゴールを設定することで、ナレッジマネジメントに必要な機能やシステムの選定、導入に必要な組織体制、訓練プログラムの構築などが明確になります。
- ナレッジマネジメントのプラットフォームを選定する
ナレッジマネジメントには、ドキュメント管理システム、グループウェア、イントラネット、メールシステムなど、多くのプラットフォームがあります。目的に合わせて最適なプラットフォームを選択しましょう。また、システムの導入にあたっては、セキュリティ対策、コンプライアンスの確保、システムの利用方法の説明等、慎重な計画が必要です。
- ナレッジマネジメントの運用ルールを策定する
ナレッジマネジメントを実施するには、運用ルールを策定する必要があります。例えば、情報を登録する責任者や情報の承認者、検索キーワードの定義、情報の更新期限、情報の削除基準などを明確にしましょう。
3.業務の可視化
業務の可視化を行うことで、現職者が担当している業務内容や手順を明確にし、引き継ぎ資料としての役割を果たします。Ganttチャートやタスク管理ツールなどを活用することが重要です。なお、業務の可視化を行う上で注意すべき点はいくつかあります。以下に注意して作成していきましょう。
- 全体像の把握
業務の全体像を把握することが重要です。部分的な可視化だけでは全体の流れを理解することができず、最適化のための重要な情報を見落とす可能性があります。 - データの正確さ
正確なデータを用いることが極めて重要です。
誤ったデータや情報に基づく可視化は誤った結論を導く可能性があります。 - 適切なツールの選択
可視化には適切なツールを使用することが重要です。
情報の複雑さや目的に応じて、最も適したツールや方法を選択することが必要です。 - 情報の更新
業務プロセスは時間と共に変化するため、定期的に情報を更新し、現在の状況を反映するようにすることが重要です。 - 参照可能性
業務の可視化は全ての関係者が容易に参照できるようにすることが重要です。
あまりに専門的すぎる表現や複雑すぎる表示方法は、理解を妨げる可能性があります。 - プライバシーとセキュリティ
個人情報や機密情報を扱う場合は、プライバシーやセキュリティを保護するための対策が必要です。組織内で情報セキュリティポリシーを設定し、全てのスタッフに理解と遵守を求めておきましょう。 - 目的の明確化
可視化の目的を明確にしておくことが重要です。
それは業務効率の向上、コスト削減、品質改善など、何を達成したいのかを明確にし、それに基づいて可視化を進めます。
4.ペアワークの導入
ペアワークとは？
主に教育や研修、仕事の中で使われる学習・作業手法の一つで、2人1組で行う活動のことを指します。
教育分野では特に語学学習やプログラミング教育でよく用いられます。
このペアワークを導入し、現職者と引き継ぎ先の社員が一緒に業務を行うことで、引き継ぎ資料が不足することを防ぎます。また、引き継ぎ先が実際に業務を行うことで、理解が深まります。
具体的な活動は以下のようなものが考えられます。取り入れる際に参考にしてみてください！
- 共同作業
引き継ぎ対象の業務を二人一組で行うことで、実際の作業フローと詳細な手順を引き継ぎ先の社員が体験的に理解できます。また、現職者は作業中にその理由や背景を説明することができ、タクシット知識（暗黙知）の伝達も促進されます。 - 問い合わせ・フィードバック
引き継ぎ先の社員が自分で業務を行いつつ、現職者に対して質問を行ったりフィードバックを受けたりすることで、疑問点を解消し、スキルを磨くことができます。 - ドキュメンテーション
引き継ぎ資料の作成や確認を共同で行うことで、資料の内容が現場の業務と完全に一致することを確認できます。また、引き継ぎ先の社員が資料を理解しやすい形に修正することも可能です。
このようなペアワークを行う際には、予め目的と目標を明確にし、適切なペアを組み、作業の進行と結果を評価・フィードバックする体制を整えることが重要です。
5.OJT（On the Job Training）の実施
OJTを実施することで、現職者が引き継ぎ先の社員に対して、業務内容や手順を直接指導することができます。引き継ぎ資料が不足している場合には、OJTを積極的に導入することが重要です。
現職者が引き継ぎ先の社員に対して、業務内容や手順を直接指導する時間がない場合は、以下のような方法があります。
- 電話やメール、チャットツールなどを利用して、業務に関する質問や疑問点に対応する
- 引き継ぎ資料を作成し、業務内容や手順をまとめたマニュアルを作成する
- ビデオ会議ツールなどを利用して、リアルタイムでのコミュニケーションを行う
- リモートワーク用のコラボレーションツールを活用して、引き継ぎ資料の共有やタスクの共有を行う
これらの方法を活用することで、現職者が引き継ぎ先の社員に対して、業務内容や手順を直接指導することができなくても、適切な引き継ぎを行うことができます。ただし、できる限り現職者と引き継ぎ先の社員が直接対面することが望ましいため、時間的な余裕がある場合には、面談や研修なども検討してみると良いでしょう。
6.現職者と新人のマッチング
現職者と新人のマッチングも引き継ぎ資料を充実させるために重要な要素です。新人には引き継ぎ資料を読んで勉強することが求められますが、実際の業務を理解するためには、現職者から直接教えてもらうことが効果的です。そのため、新人が引き継ぎを担当する現職者と相性がよく、信頼関係が築けるようなマッチングを考慮することが大切です。以下にいくつかの秘訣を提供しますので、参考にしてみてください。
- 共通の価値観と目標
マッチングを成功させるためには、新人と現職者が同じ価値観と目標を共有していることが重要です。
これは会社の文化や哲学を理解し、それに沿って働く意欲があることを意味します。 - 互いの尊重
互いの能力と経験を尊重することが、強固な信頼関係を築く基盤となります。
これは新人が現職者から学び、現職者が新人に教える環境を作ることに繋がります。 - オープンコミュニケーション
互いの期待を明確にし、定期的にフィードバックを行うことで、誤解を防ぎ、改善の機会を見つけることができます。
コミュニケーションは双方向でなければなりません。 - 柔軟性
互いに適応し、新しい状況に対応する能力は、困難な状況を乗り越え、成功につながります。
新人が柔軟な姿勢を持つことは、現職者との関係を強化し、学習を促進します。 - 指導力と学習意欲
現職者は優れた指導力を持つことが必要で、新人は学びたいという意欲を持つことが求められます。
それぞれが自分の役割を理解し、それに従って行動することが重要です。
これらの秘訣を理解し適用することで、新人と現職者の間に強固な信頼関係を築き、効果的な職務引き継ぎを実現することができます。
まとめ
組織の成長と進化は、個々のメンバーの引き継ぎの成功に大きく依存しています。
退職者の引き継ぎミスは、新たなチャレンジへの一歩を遅らせ、組織全体の生産性を阻害する可能性があります。
しかし、この6つの対策を適切に実施することで、そのリスクを最小限に抑え、新たなスタッフが円滑に役割を引き継ぐことが可能になります。組織の未来を見据え、引き継ぎの不足を解消するための戦略を今すぐにでも計画しましょう。
参照元：厚生労働省
- 引継ぎ資料はどのようなことを記載すれば良いですか？
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引継ぎ資料には、今までの仕事内容や業務に関する情報を記載することが重要です。また、業務を引き継ぐ人が知っておくべき重要な情報や、今までの仕事で得た知識などを記載することが望ましいです。
- 引継ぎ資料を作成するのに適したツールはありますか？
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Microsoft WordやGoogleドキュメントなどのワープロソフトウェアが適しています。
