職務分析は、組織の生産性と効率性を高めるための重要な手段です。しかし、その適切な実施には詳細な手順と計画が必要となります。本記事では、職務分析体制を整備するための具体的な8つの手順を提供します。
さらに、業務量を削減し、組織のパフォーマンスを向上させる方法についても探ります。
職務分析を実施するための体制が整っておらず、業務量が増えている。
以下のことを試してみてください!
業務量削減方法
- 業務プロセスの見直し
- 自動化とデジタル化
- アウトソーシング
- トレーニングと教育
業務プロセスの見直し
業務プロセスを詳細に見直し、冗長な部分や改善可能な点を見つけ出します。業務プロセスの見直しにおける業務量削減方法には以下のようなものがあります。
- 業務フローチャートの作成:
業務の全体像を理解するために、業務フローチャートを作成します。
これにより、各工程の役割とそのつながり、そして全体の流れを視覚的に把握することができます。 - 不必要な工程の削減:
業務フローチャートをもとに、各工程の価値と必要性を検討します。
価値が低い、または不必要な工程が見つかった場合は、それを削減または排除します。 - バッチ処理:
頻繁に行う単純作業は一度にまとめて行う(バッチ処理)ことで、業務の効率を向上させることができます。 - 工程の統合:
関連する複数の工程は、可能であれば統合します。これにより、作業の手間や時間を減らすことが可能です。 - ロールの再定義:
同じ業務を複数の人が行っている場合や、業務の重複が見られる場合は、職務の役割や責任を再定義します。 - システム導入・自動化:
手作業で行っている部分で、システムにより自動化可能なものはないか検討します。
自動化により、作業の時間を大幅に短縮できます。 - 業務の標準化:
同じ業務でも人によって手順や方法が異なると効率が落ちるため、業務の標準化を進めます。
自動化とデジタル化
手動で行っている業務が自動化可能な場合は、ソフトウェアやAIの導入を検討します。手動業務の自動化は生産性の向上、ミスの減少、コスト削減など多くの利点があります。これは、時間をかけて繰り返し行う作業や、単純だけれどもミスが許されない作業などで特に有効です。
自動化を検討する際には、以下のステップを踏むと良いでしょう。
- 業務の洗い出し
手動で行われている業務をすべてリストアップします。
これには、日々の業務はもちろん、定期的に行われる報告作成なども含まれます。 - 自動化可能性の評価
各業務が自動化可能かどうかを評価します。
これは、作業の単純さ、繰り返し度、ミスの影響、手動での作業時間など、さまざまな要素に基づくものです。 - 優先順位付け
自動化可能な業務の中から、最も影響の大きいもの、または最もコスト効果の高いものを優先的に選びます。 - ソリューションの選択
自動化に最適なソフトウェアやAIツールを選びます。これは、具体的な業務内容、予算、技術的な制約などによります。 - 導入と評価
選んだソリューションを導入し、その効果を評価します。初期の段階では手動と自動の両方を行い、自動化が適切に機能していることを確認します。
ソフトウェアやAIの導入は一度にすべての業務を自動化することは難しいかもしれませんが、一つずつ自動化を進めていくことで大きな効果を得られることでしょう。また、自動化による効果はそのまま会社の競争力向上につながるため、積極的に取り組むことをお勧めします。
アウトソーシング
専門知識を必要とする業務や時間がかかる業務は、外部の専門業者に委託することを検討します。以下のような理由をもとに導入を検討していきましょう。
- 専門知識
外部の専門業者はその分野に特化した知識や技術を持っています。
自社でその専門性を持つためには時間とコストがかかるため、効率的に専門知識を活用できます。 - 時間の節約
外部に業務を委託することで、社員が他の重要な業務に集中できます。
これにより、全体の生産性が向上する可能性があります。 - コスト削減
専門的な業務を自社で行うためには、専門の人材を採用したり、トレーニングを行ったりする必要があります。それに対して、外部の専門業者に委託することで、これらのコストを削減することが可能です。 - リスク管理
プロジェクトや業務のリスクを外部業者と共有することで、リスクを分散することができます。
ただし、アウトソーシングには注意点もあります。契約内容を明確にし、コミュニケーションを適切に行うこと、そして委託した業務の品質を確認し続けることが重要です。また、アウトソーシングする業務が企業の核心的な競争力に関わるものであれば、その知識や技術が外部に流出するリスクも考慮する必要があります。
以上の要素を総合的に考慮し、専門知識が必要な業務や時間がかかる業務をどの程度アウトソーシングするか、またそれにどのような業者を選ぶかなど、戦略的に決定することが重要です。
トレーニングと教育
従業員のスキルを向上させ、業務の効率性を高めます。
従業員のスキル向上や業務の効率性を高めるための方法は多数ありますが、以下にいくつかの主要な戦略を示します。
- 研修・教育プログラム
研修や教育プログラムを通じて、従業員の知識や技能を強化することができます。
これは新たな技術の導入、新しい業務手順の教示、新しい業界の動向や規制の説明などを含みます。 - メンターシップ・コーチング
経験豊富な従業員や外部の専門家をメンターやコーチとして活用することで、従業員のスキルを個別に伸ばすことができます。 - 業務プロセスの見直し
業務プロセスを定期的に見直し、無駄を省いたり、新しいツールや技術を取り入れたりすることで、効率性を高めることが可能です。 - ツール・テクノロジーの導入
生産性を向上させるソフトウェアやテクノロジーを導入することも有効です。
これにはコミュニケーションツール、プロジェクト管理ツール、自動化ソフトウェアなどがあります。 - フィードバックと評価
定期的なパフォーマンスの評価とフィードバックは、従業員が自分の業績を理解し、向上策を見つけるのに有効です。 - 従業員のエンゲージメント
働きがいや仕事への満足感を高めることで、生産性や効率性も向上します。
これには職場環境の改善、報酬や福利厚生の見直し、キャリアパスの明確化などがあります。
これらの方法は一概には全ての組織や状況に適用できるわけではなく、それぞれの組織の文化、リソース、目標などを考慮して最適な戦略を選ぶことが重要です。
職務分析体制整備
1.目的の明確化
何のために職務分析を行うのか、その目的を明確にします。たとえば、人事評価の基準を見直すため、新しい教育・研修プログラムを作るため、あるいは組織の業務フローを改善するためなど、目的はさまざまです。以下のようなものが考えられます。
- 募集・選考
職務に必要なスキルや経験を明らかにし、これを募集要項に反映することで、適切な人材を集めやすくなります。
また、選考の際の評価基準を明確にすることも可能です。 - 教育・研修
職務に必要なスキルを明らかにすることで、これを基に教育・研修プログラムを作ることができます。 - 評価・報酬
職務の内容を明らかにし、それに対する適切な評価基準や報酬体系を設定することができます。 - キャリアパスの設定
ある職務から他の職務へ移る際に必要なスキルや経験を明確にし、従業員が自身のキャリアパスを描くための情報を提供することができます。 - 業務プロセスの改善
各職務がどのように組織の目標に寄与しているのかを明らかにし、業務プロセスの改善点を見つけることができます。
以上のように、職務分析は人事管理の各領域において有効な情報を提供し、組織運営を効率化するための重要な基盤となります。
2.情報収集の計画
職務に関する情報をどのように収集するか計画します。対象とする職務、情報収集の方法(面接、アンケート、観察など)、情報収集のスケジュールなどを決定します。以下に、情報収集に関する各要素を詳しく説明します。
- 対象とする職務の選定
全ての職務について同時に分析するのは困難であるため、最初に分析の対象とする職務を選定します。
これは組織の目標や課題、人員配置の状況などに基づいて決定されます。 - 情報収集の方法: 職務の情報は面接、アンケート、観察、作業ログの分析など、様々な方法で収集できます。どの方法を選ぶかは対象とする職務の性質や組織の状況によります。例えば、観察は具体的な業務の流れを把握するのに有効ですが、高度な専門知識を必要とする職務には向いていない場合があります。また、面接やアンケートは職務担当者の意見を直接聞くことができますが、時間やコストがかかる場合があります。
- 情報収集のスケジュール: 職務分析は一定の時間と労力を必要とするため、スケジュールを作成し、適切に時間を管理することが重要です。また、情報収集のスケジュールは他の業務との兼ね合いや対象者の都合も考慮に入れるべきです。
- 情報収集の実施者: 情報収集は専門家、人事部門のスタッフ、あるいは外部のコンサルタントなどが行います。実施者は情報収集の方法に精通しており、かつ分析の目的を理解している必要があります。
これらの要素を考慮に入れて情報収集の計画を立てることで、効率的で質の高い職務分析を行うことが可能となります。
3.情報収集の実施
上記の計画に基づいて、職務に関する情報を収集します。情報収集のフェーズは、具体的な職務の詳細を明らかにする非常に重要なステップです。これには、具体的な業務内容、必要なスキルや知識、業務を遂行するための環境などが含まれます。以下の要素を特に注視して情報を収集することが一般的です。
- 具体的な業務内容
これは特定の職務において何が期待され、何が達成されるべきかを理解するための基礎となります。
具体的には、職務担当者が何を行い、どのような結果を生み出すべきか、という点が詳細に説明されます。 - 必要なスキルや知識
この情報は、特定の職務を適切に遂行するために必要なスキルや知識、経験を特定します。
これには技術的なスキル、対人スキル、業界知識、特定のソフトウェアの利用能力などが含まれます。 - 業務を遂行するための環境
これには、物理的な作業環境(オフィス、工場、リモートなど)、使用する機器やソフトウェア、チームや他部門との関連性、管理のレベル(自律性の度合いや監督のレベル)などが含まれます。 - 業務の頻度と重要性
各業務がどの程度の頻度で行われ、その業務が全体の成果にどれほど影響を及ぼすかも重要な情報です。 - パフォーマンス指標
どのようにして職務の達成度を測定するか、つまり何が良好なパフォーマンスを示す指標となるかを理解することも重要です。
これらの情報を収集するために、面接、アンケート、観察、業務記録の分析などの方法を活用します。この段階では、情報を収集するだけでなく、その情報が正確であることを確認するために、複数の情報源を利用することも重要です。
4.情報の整理・分析
収集した情報を整理し、分析します。どのような業務があるのか、それぞれの業務がどの程度の時間やスキルを必要とするのか、またどの業務が重要なのかなど、全体の構造を明らかにします。以下に、整理と分析の主な手順を示しますので、実施してみてください。
- 情報の整理
収集した情報を一元化し、管理しやすい形式に整理します。この段階では、必要に応じて情報をカテゴリー分けしたり、特定の形式(例えば、スプレッドシートや専用のソフトウェア)に変換したりします。 - 業務の一覧作成
業務の内容、必要なスキルや知識、業務を遂行するための環境など、各業務の詳細を一覧表にまとめます。 - 業務の優先度や重要度の評価
全ての業務が等しく重要であるわけではないため、各業務の重要度や優先度を評価します。
これは、業務の頻度、その結果が組織全体に与える影響、業務の難易度やスキルレベルなど、さまざまな要素を考慮に入れて行います。 - 業務間の関連性の分析
各業務がどのように関連しているのか、またどの業務が他の業務の前提となっているのかを明らかにします。
これにより、業務のフローやプロセスを理解することができます。
5.職務記述書の作成
分析結果をもとに職務記述書を作成します。職務記述書の作成は、職務分析の成果を具現化する重要なステップです。これには職務の全体像を把握するための基本的なドキュメントであり、一般的に以下の要素を含みます。
- 職務の名称: 職務の名称は、職務の内容を簡潔に反映したものであるべきです。
この名称は、内部的なコミュニケーションや人材募集などに使用されます。 - 職務の目的: 職務の目的は、その職務が組織全体の目標にどのように寄与するかを説明します。
- 主な業務内容: 職務に含まれる主要な業務やタスクを列挙し、それぞれの業務が何を達成することを目指しているかを説明します。
- 必要なスキルや知識: 職務を適切に遂行するために必要な技術的なスキル、ソフトスキル、知識、経験などをリストアップします。
- 責任範囲: 職務担当者がどのような決定を下し、どの程度の影響を持つことが期待されるかを明確にします。
- 業務遂行の環境: 物理的な作業環境、使用するツールやソフトウェア、チーム内での役割や他部門との関連性などを説明します。
6.確認とフィードバック
作成した職務記述書を、関係者や直接の職務担当者に確認してもらい、フィードバックを求めます。
必要に応じて修正を加えます。なお、確認を依頼する際は、以下の手順を踏むと良いでしょう。
- リーダーシップとの確認
最初に、関連する部門のリーダーや上層管理者に対して職務記述書のドラフトを送ります。
彼らは組織全体の目標と職務の調和を最もよく理解しており、また職務の重要度や影響範囲についても洞察を持っています。 - 職務担当者への確認
職務記述書は日々の業務に密接に関連しているため、その職務を担当する従業員にも確認してもらうことが重要です。
彼らは業務の詳細について最も深い理解を持っています。 - 会議の設定
さらに、可能であれば会議を設定し、各職務の関係者を集めて職務記述書を共有し、意見を求めます。
これにより、関係者全員が職務記述書の内容についての理解を深め、納得感を持つことができます。
これらの手順を通じて、作成した職務記述書の内容を各関係者に確認してもらい、それに基づくフィードバックを受け取ります。このフィードバックに基づいて職務記述書を修正・更新することで、より精確で有用な職務記述書を作成することができます。
7.職務記述書の公開と共有
修正を終えた職務記述書を組織内で公開し、共有します。これにより、職務の理解が深まり、業務の透明性が向上します。公開・共有する際には、下記のような手法を取ると良いでしょう。
- 公式な公開
作成した職務記述書を公式に公開します。これには、社内ネットワーク上に情報を掲載したり、Eメールや社内ニュースレターで職務記述書を配布したりします。公開する際には、職務記述書の目的と使用方法について説明すると良いでしょう。 - チームミーティングでの共有
各チームのミーティングやブリーフィングで職務記述書を共有します。この場で、職務の目的、必要なスキルや知識、業務遂行の環境などについて説明し、質疑応答の時間を設けると良いでしょう。 - 一対一の面談での共有
直接的な職務担当者や関連する職務の担当者との一対一の面談で職務記述書を共有します。これにより、個々の従業員が自身の職務について深く理解することを支援します。 - 定期的な更新と再公開
職務記述書は時間と共に変化する可能性があるため、定期的に職務記述書を見直し、必要に応じて更新し、再公開することが重要です。
8.定期的な見直し
時間が経つと業務の内容や必要なスキルは変わることがあります。そのため、定期的に職務分析を行い、職務記述書を更新することが必要です。
これらの手順は一般的なものであり、具体的な進め方は組織の規模や文化、目的などによります。また、職務分析は時間と労力を要する作業ですが、その結果は人事管理の各領域に活用できるため、重要な取り組みです。
まとめ
以上、職務分析体制の整備から業務量削減まで、組織の生産性と効率性を向上させるための戦略を探りました。これらの手順を適切に実施することで、組織は目標を達成し、市場での競争力を維持することができます。
しかし、職務分析は一度限りの作業ではありません。市場環境の変化に対応するためには、定期的な見直しと更新が必要です。組織の成功は、職務の理解と適応の継続的なプロセスによって支えられているのです。
参照元:厚生労働省
- 職務分析の体制を整備しようと思うのですが、リソース不足が課題です。
-
プロジェクトを段階的に進行させること、または外部のコンサルタントを利用してみましょう。
- 全ての業務に関する詳細な情報を収集するのは難しい
-
職務担当者や関係者に対するインタビューや観察、アンケートなど、様々な方法で情報を収集を行っていきましょう。