業界全体が変化を続け、新たな技術や働き方が登場する中、人材の適性評価は組織の成功にとってより重要な役割を果たすようになりました。企業は適材適所の人材配置を目指すために、個々の職種に最も適した人材評価軸を構築する必要があります。この記事では、そのための具体的な5つの手順をご紹介します。
業務内容に応じた人材の評価軸を構築する必要があるが、その方法が分からない。
以下のことを試してみてはどうでしょうか?
1.業務分析
業務の性質や目的を明確に理解することは、人材評価軸を正確に設定する上での第一歩となるため、最初に業務の性質や目的、それを遂行するために必要なスキルや知識、業績を評価するための指標などを明確にします。職務分析の結果を活用することができます。
業務分析はこの段階で非常に重要な役割を果たします。それぞれの業務が何を目指し、どのようなスキルや知識を必要とし、どのような成果を生むべきかを把握することで、その業務に適した人材を評価、配置するための基準を作ることができます。
具体的には
業務内容や必要なスキルを詳細に記述した職務記述書、業務遂行に関わる行動や能力を評価した職務評価など、職務分析の結果をもとに人材評価軸を設定します。
また、目指すべき業績の指標を設定し、それが達成された場合にはどのように評価するかも明確にします。
2.評価軸の設定
業務分析の結果を基に、評価するべき要素を明確にします。これは、必要なスキルや知識、業績指標、行動規範、組織の価値観などに基づくことが多いです。業務分析の結果を基に評価するべき要素、すなわち評価軸を設定することは、人材評価の基本的なステップです。
必要なスキルや知識
職務遂行に必要な専門知識や技術スキル、問題解決能力、コミュニケーション能力などの「能力」を指します。
これらの要素は、個々の職務に対する具体的な適性やパフォーマンスを評価する基礎となります。
業績指標
業績評価に用いられる具体的な数値目標や基準です。
これには、販売数、顧客満足度、プロジェクトの進捗状況など、その人の業績を具体的に測定可能な指標が含まれます。
行動規範
従業員が業務遂行中に示すべき行動様式や態度を示します。
これには、チームワーク、リーダーシップ、イニシアティブ、倫理規範の遵守などが含まれます。
組織の価値観
組織のミッション、ビジョン、文化に基づく行動や態度を評価します。
これには、創造性、イノベーション、多様性への敬意、社会貢献などが含まれることがあります。
3.評価基準の定義
次に、それぞれの評価軸について、具体的な評価基準を定義します。これは、どの程度のスキルや知識、どのような成果、どのような行動をどのレベルで評価するかを明示するものです。
評価軸とその具体的な評価基準を定義するための一例を以下に表形式で提供します。
ただし、これらは例であり、各組織の具体的な状況や目標により適切な評価基準は変わり得ることをご理解ください。
評価軸 | 評価基準 |
---|---|
技術スキル | 1) 専門知識を有する 2) 技術的な問題を自己解決する能力 3) 最新の技術トレンドに精通している |
業績 | 1) 販売目標達成率 2) プロジェクト完了までの期間 3) 顧客満足度 |
コミュニケーション能力 | 1) 明確かつ効果的なコミュニケーションを行う能力 2) チーム内での意見や情報の共有 3) 他者の意見を尊重し、理解しようとする態度 |
倫理規範遵守 | 1) 企業の倫理規範と方針を理解し、遵守する 2) 不適切な行動や決定を避ける 3) 問題が発生したときにそれを報告する |
イノベーション | 1) 新しいアイデアや解決策を提案する 2) 変化を受け入れ、それを利用する能力 3) 自身の業務やチームの業績改善のために新しい方法を模索する |
このような評価基準を設定することで、各評価軸に対する具体的な期待値を明確にし、従業員のパフォーマンスを客観的に評価することが可能になります。また、これらの基準は、パフォーマンスの改善やスキル開発の目標を設定するための基準ともなります。
4.評価方法の選定
それぞれの評価軸をどのように評価するかを決定します。これには、自己評価、上司による評価、同僚や部下からのフィードバック、客観的な業績データなどが活用できます。具体的には以下のような方法があります。
- 自己評価
自己評価は、従業員自身が自分のスキル、行動、業績について評価するプロセスです。
これにより従業員は自己認識を深め、自分の強みと弱み、成長の余地を認識します。
これはまた、上司や人事担当者とのフィードバックの会話の一部ともなります。 - 上司による評価
上司による評価は、従業員の直属の上司が行います。これは通常、従業員の業績、スキル、行動についての評価を含みます。上司は従業員の業績を直接観察する立場にいるため、その評価は重要です。 - 360度フィードバック
360度フィードバックは、従業員のパフォーマンスについて、その従業員の上司、部下、同僚からフィードバックを集める方法です。これにより、評価は一人の視点に依存せず、よりバランスの取れた視点で行われます。 - 客観的な業績データ
具体的な業績目標やKPI(Key Performance Indicator)など、数値で測定可能な結果に基づく評価も重要です。これは、特に業績評価の公平性を確保するために重要です。
5.評価軸の導入と評価
最後に、設定した評価軸を組織内に導入し、定期的に評価を行います。そして、その結果を基に人材配置や育成、報酬などを決定します。なお、評価の頻度は、その目的や組織のニーズによりますが、一般的には年1回や半年に1回の形で行われることが多いです。ただし、最近では、年1回の評価だけでなく、定期的なフィードバックや途中評価の機会を設けることが推奨されています。
- 年次評価
これは一般的に、従業員のパフォーマンスの全体的な評価や、昇進、賃金の決定のために行われます。
この評価は通常、上司と従業員が1対1で行う評価面談を含みます。 - 定期的なフィードバック
年次評価だけでなく、定期的なフィードバックの機会を設けることが推奨されています。
これは毎月や四半期ごとなど、より頻繁に行われ、従業員の業務の進捗や問題点、改善点などについて話し合います。 - 途中評価
年次目標を設定した場合、中間点での評価を行うことも有効です。
これは、従業員が目標に向けてどの程度進んでいるのかを確認し、必要に応じて目標を調整する機会となります。
評価の頻度や形式は、組織のサイズや業績、業界、文化などによって変わる可能性があります。
そのため、どの評価方法が適切かは、それぞれの組織の具体的な状況によります。
まとめ
この記事で述べた5つの手順を通じて、業務に適した人材評価軸を構築することで、組織全体の業績向上を図ることができます。評価軸の構築は、個々の従業員が自身の強みを活かし、組織の目標達成に貢献できる環境を作る重要な一歩です。
このプロセスは組織の成長、従業員の満足度向上、そして全体的な業績向上に直接つながる投資と言えるでしょう。
今後も継続的に人材評価軸を見直し、改善し、最適化していくことが重要です。それぞれの企業が最適な人材評価軸を見つけ、成功へと導くことをお祈りしています。
参照元:厚生労働省
- 評価軸があいまいで不明確。
-
評価軸を明確にし、それぞれの軸が何を意味するのか具体的な例や指標を用いて説明します。また、従業員と共に評価軸を設定することで、理解と受け入れを促すことができます。
- 評価がパフォーマンス改善に繋がらない
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評価は具体的な行動や結果に基づくものにし、それがどのように改善すべきかの具体的なフィードバックと共に提供しましょう。また、スキル開発や教育プログラムを用意し、従業員が評価を改善するためのサポートも提供しましょう。