組織が変化し、新たな業務要件が生まれる中で、職務分析の定期的な見直しと改訂は重要なプロセスです。
組織は常に最新の業務要件に適応する必要があります。
本記事では、職務分析を改訂するための6つの手順と見直し方法をご紹介します。
これにより、組織は効果的な人材配置と業務遂行を実現し、組織の成功に寄与することができます。
業務に求められる能力やスキルの変化に対応するために、職務分析を改訂する必要があるが、その方法が分からない。
以下の方法を試してみてください!
職務分析改訂のための手順
職務分析の準備
まず、分析対象となる職務を明確にします。分析の目的、職務の範囲、分析方法を決定します。職務分析改訂の初期段階では、分析の目的、職務の範囲、そして分析方法の決定が重要となります。以下にそれぞれの決定方法について説明します。
- 分析の目的を決定
職務分析の目的を明確に定義することが大切です。目的は、人事評価の基準を作る、新たなトレーニングプログラムを開発する、効率的なチーム構成を作り出す、など様々です。職務分析の目的は組織の全体的な戦略と整合性を持つように設定することが必要です。 - 職務の範囲を決定
分析の対象となる職務の範囲を明確にします。すべての職務を一度に分析することは困難であるため、まずは重要度や緊急性に基づいて優先順位をつけることが一般的です。それは例えば新しく作られたポジション、または組織の目標達成にとって重要な役割を果たすポジションである可能性があります。 - 分析方法を決定
分析方法にはインタビュー、アンケート、観察、ワークショップ、直接の業務参加などがあります。
使用する方法は、組織のサイズ、分析の目的、時間や資源、職務の性質などによって変わります。
例えば、規模が大きい組織ではアンケートが適しているかもしれません。
また、極めて特殊なスキルや知識を必要とする職務では、直接の観察やワークショップが有効かもしれません。
データ収集
対象職務の従業員やその上司からインタビューやアンケートを通じて情報を収集します。
また、直接職場で働く様子を観察したり、業務の記録を検討することもあります。
なお、職務分析を行う際には、職務に関する具体的な情報を得るための適切な質問を設計することが重要です。
以下に、対象職務の従業員やその上司に対して、インタビューやアンケートを通じて情報を収集するためのサンプル質問をいくつか挙げてみます。
- その職務の主な目的とは何ですか?
- 一日の仕事の流れを説明していただけますか?
- 各タスクに通常どのくらいの時間を費やしますか?
- この職務を遂行するために必要なスキルや知識は何ですか?
- この職務で達成すべき主な目標や成果物は何ですか?
- この職務における最も困難な部分は何ですか?
- この職務に必要な専門的なトレーニングや教育は何ですか?
- この職務における責任範囲を教えてください。
- この職務に関連する重要な意思決定や問題解決は何ですか?
- この職務の遂行において、どのような物理的な能力や精神的な能力が求められますか?
これらの質問は、特定の職務に関する詳細な情報を収集するための基本的なガイドラインとして使用できます。しかし、具体的な質問は職務の特性や組織の目標によって変わる可能性があるので、それに応じて適切に調整することが重要です。
データ分析
データの分析は、収集した情報を組織し、理解し、洞察を得るためのプロセスです。収集したデータを分析し、業務内容、必要なスキルや知識、職務に必要な行動や能力などを明らかにします。以下に手順を示しますので、参考にしてください。
- データの整理
まず、収集したデータを整理します。これには、質問ごとの回答のまとめ、同じような回答のグループ化、主要なテーマやパターンの特定などが含まれます。データを整理することで、全体像を把握しやすくなります。 - データの分析
次に、整理したデータを分析します。これには、どのような業務が行われているか、それらの業務に必要な具体的なスキルや知識は何か、どのような行動や能力が必要なのか、を明らかにします。
これらの情報は、具体的な行動、業務結果、知識やスキル、そして必要な能力(身体的、精神的能力など)を特定するために、インタビューやアンケートの回答、観察記録を深く掘り下げて分析します。 - 洞察の抽出
分析結果から、重要な洞察を抽出します。これには、特定の職務において最も重要なスキルや知識、時間を最も多く消費する業務、業務遂行に際して直面する困難などが含まれるかもしれません。 - レポートの作成
最後に、分析結果と洞察をまとめたレポートを作成します。
これは、職務分析の結果を共有し、職務記述の作成やその他の人事管理活動に使用するためのものです。
このプロセスを通じて、職務に関する深い理解を得ることができます。そして、その理解を基に、より効率的な業務の流れを設計したり、必要なスキルや知識を獲得するためのトレーニングプログラムを開発したりすることが可能になります。
職務記述の作成
分析結果をもとに職務記述書を作成または更新します。なお、職務記述書は「特定の役職」や「職務の詳細な情報」を記載した文書で、その職務の主要な目的、主な業務、必要なスキルや知識、責任範囲などが含まれます。以下に、マーケティングマネージャーの職務記述書の例を作成します。
職務名称: マーケティングマネージャー
報告先: マーケティングディレクター
職務の目的: 企業の製品やサービスのプロモーションを戦略的に設計し、実行することで、ブランド認知度を向上させ、売上を増加させる。
主要な業務:
- マーケティング戦略の開発と実行
- ターゲット市場の調査と分析
- マーケティングキャンペーンの開発と管理
- マーケティングチームの監督と指導
- マーケティング活動の効果測定と報告
- 予算管理と業績目標達成の追求
必要なスキルと知識:
- 優れたコミュニケーションとリーダーシップスキル
- データ分析と市場調査の経験
- プロジェクト管理と予算管理のスキル
- デジタルマーケティングの知識(SEO、SEM、SMMなど)
- マーケティングに関連するソフトウェア(例:Google Analytics, CRMツール)の操作能力
責任範囲: マーケティング戦略の成功とマーケティングチームのパフォーマンスに対して責任を持つ。
このような形式で職務記述書を作成することで、現在の従業員だけでなく、新たに採用する候補者にもその職務の要件や期待される業績を明確に伝えることができます。
職務分析の検証
作成された職務記述が正確であり、全ての重要な職務をカバーしていることを確認します。
関連する従業員や上司からフィードバックを得ることも重要です。なお、職務記述が正確で全ての重要な職務をカバーしていることを確認するためには、以下のような方法を取ることが一般的です。
- 関係者とのレビュー
職務記述書は、その職務を担当する従業員やその上司、関連する他の職務の従業員にレビューを依頼し、フィードバックを得ることが有効です。これにより、現場の視点から職務記述書が正確であるか、また全ての重要な職務をカバーしているかを確認できます。 - 職務の観察
可能であれば、直接その職務の遂行を観察し、その業務が職務記述書に正確に反映されているかを確認することも有効です。職場での実際の動きを理解することで、見落としがちな要素や新たな視点を得ることができます。 - 期間を設けて見直し
職務記述書は一度作成したら終わりではありません。定期的に見直しを行い、業務内容や必要なスキルが変化していないかを確認します。また、新たに追加された職務や変更された責任範囲があれば、それを反映させます。 - 外部の専門家のレビュー
組織内部だけでなく、場合によっては外部の専門家(人事コンサルタントや法律家など)にレビューを依頼することも有用です。これにより、法律的な問題や一般的なベストプラクティスから外れていないかを確認できます。
分析結果の実装と維持
正確な職務分析結果は、人事管理のさまざまな領域で大きな影響を持ちますので、分析結果を人事管理の各領域(採用、研修、パフォーマンス評価など)に適用します。また、定期的な見直しを行い、組織の変化や市場の変動に対応します。
見直し方法
定期的な見直し
職務内容は定期的に見直すことが重要です。特定のタイミング(例えば、年次)で全ての職務を見直すのが一般的です。
これには以下のような理由があります。
- 業務変化の捉え方
組織や業界の変化に伴い、職務の内容は時々変化します。新たな技術の導入、業務プロセスの改善、組織の再構築などがこれに該当します。これらの変化は従業員の職務内容に直接影響を及ぼすため、定期的な職務分析の見直しが必要となります。 - パフォーマンス評価
職務内容の明確化は、従業員のパフォーマンスを公正かつ客観的に評価するための基準を提供します。
職務内容が時代遅れであったり、現実的な業務内容を反映していない場合、評価は不公正かつ非効率的になる可能性があります。 - 人事計画
職務内容の見直しは、採用、研修、昇進、退職などの人事計画にも影響を及ぼします。
これにより、組織は適切な人材を採用し、適切な研修を提供し、適切な昇進を行うことが可能となります。
変化への対応
組織や市場環境の変化(新製品やサービスの導入、業績の変動、技術の進化など)があった場合、それに応じて職務内容を見直す必要があります。以下に、それぞれの変化が職務内容の見直しを必要とする具体的な理由を説明します。
新製品やサービスの導入:
新製品やサービスの導入は、その開発、マーケティング、販売などに関わる職務の内容を変える可能性があります。これには新たなスキルや知識、技術が必要となることが多く、職務内容の見直しを必要とします。
業績の変動:
業績の変動は、業務の優先順位や組織の戦略を変える可能性があります。例えば、業績が悪化している場合、コスト削減や効率化が重要となる可能性があります。これは、特定の職務がより多くの責任を負うか、または新たな業務を追加する必要があることを示すかもしれません。
技術の進化:
技術の進化は、仕事のやり方を根本的に変える可能性があります。新たなソフトウェアやツール、プラットフォームの導入は、それを運用するための新たなスキルや知識を必要とします。これは、既存の職務内容の見直し、あるいは全く新しい職務の作成を必要とするかもしれません。
これらの変化は、組織が競争力を保ち、成功を続けるためには適応する必要があります。
それに伴い、職務内容もこれらの変化を反映する形で見直されるべきです。これにより、従業員が必要なスキルと知識を持ち、組織の目標達成に貢献できるようになります。
フィードバックの取り込み
職務分析の見直しにおいて、従業員や上司からのフィードバックは非常に価値のある情報源となるため、従業員や上司からのフィードバックを職務分析の見直しに活用します。彼らは日々の業務を直接経験しているため、職務内容の現実的な調整に必要な具体的な情報を提供できるため、調整に役立ちます。以下に、具体的なフィードバック活用方法をいくつか示しますので、参考にしてください。
1. フィードバックの収集
従業員や上司からのフィードバックを収集するためのシステムを設けることが重要です。これには、定期的なパフォーマンスレビュー、アンケート、フィードバックボックス、または直接的な面談などが含まれます。
2. フィードバックの分析
収集したフィードバックは、分析し理解することが重要です。従業員や上司が特定の業務や責任について頻繁に言及しているか、または特定のスキルや知識の重要性を強調しているかなどを見ることで、職務分析の修正に必要な情報を見つけることができます。
3. フィードバックの実装
フィードバックから得られた洞察は、職務記述の更新や修正に活用されます。これは新たな業務の追加、既存の業務の削除、または必要なスキルや知識の調整などを含む可能性があります。
このプロセスを通じて、組織は職務内容が現実の業務を正確に反映していることを確認し、必要な場合は適切に調整することができます。このようにして、フィードバックは職務分析の見直しに非常に重要な役割を果たします。
まとめ
職務分析は組織の業務に基づく重要な基盤ですが、それは固定的なものではありません。
組織の変化や新たな要件に応じて、職務分析を定期的に見直し、改訂することが不可欠です。
本記事で紹介した6つの手順と見直し方法を活用して、組織は変化する環境に対応し、適切な業務要件に基づいた人材配置を実現できるでしょう。職務分析の改訂を通じて、組織の効率性とパフォーマンスを向上させ、成功に繋げましょう。
参照元:厚生労働省
- 特定の人にしか職務情報を聞き出せない。
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できるだけ、多角的な視点から情報を収集するようにしましょう。異なる職位や役職の人々からの意見を集め、可能な限り公平でバランスのとれた視点を確保します。
- 組織や業界の変化が早く、作成した頃にはすでに遅い。
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職務記述書は、具体的なタスクや技術について詳細に記述するのではなく、より一般的なスキルや能力に焦点を当てることで、よりフレキシブルにすることが可能です。これにより、新しいタスクや技術が現れたときにも対応可能となります。対策を通じて、職務分析と職務記述の精度と有用性を維持し、組織の変化や市場の変動に迅速に対応していきましょう。